2017年12月4日月曜日

2018年・2019年タッチウエイトマネジメント研修会のご案内

2018年のタッチウエイトマネジメント研修会は10月~11月に予定しています。研修会の要望が多い場合には、日程の都合上分散開催とし上記日程に入らない会場を2019年5月~6月に行います。

先日これまで研修会を行った会場と新たに開催の打診のあった会場に案内状をメール等にてお送りしました。(これまで研修会を行ったことのある地域とその主催者は過去ログをご参照ください)

今まで開催したことのある会場には実習編を提案しました。基本的に2日間のプログラムで1台を作業して仕上げます。基礎的な知識や計測方法はすでに知っているものとして作業全体の構成を学び、作業前後でのタッチの違いを体験します。

新規に開催する計画の会場には、基礎編・初級中級編を提案しています。タッチウエイトマネジメントの基礎知識を簡単な実習を通して学んでいただきます。

この研修会の開催に興味のある団体・個人で今回の案内を受け取っていない方は中村まで直接お問い合わせください。yuji3804@gmail.com

(追記)日本での研修会に先立ち2018年4月にオーストラリア・シドニー市にて3日間のタッチウエイトマネジメント実習研修会を開催します。(すでに定員一杯です)

Touch Weight Management seminar in Japan will be planned from October to November 2018. It will be additional dates from May to June 2019 if more than 6 seminars are asked. The finalized plan will be announced in March 2018. 

TWM seminar will be held in Sydney, Australia, in April 2018. It will be a 3-days practical session. Maximum 9 participants are proposed, however it's already full. Please contact Mark Bolsius at Touchstone Pianos, Melbourne, Australia at mark@touchstonepianos.com.au for inquiry.

Yuji is available if you were interested in hosting TWM seminar in your area. Please email to yuji3804@gmail.com for inquiry. 


2017年8月3日木曜日

スタインウェイB型のタッチウエイトマネジメント(続)

前回紹介したスタインウェイB型の仕事が終わりました。

まず偶数鍵のハンマーを外して下整音、センターのトルク調整、HSW測定をしました。
HSWをスマートチャートにプロットして傾向線を書き入れます。調整幅を考え鉛筆線のような感じに決めました。指標8.5、次高音からやや重めに持っていきます。最高音部はタッチウエイト上この程度では問題ないので、なるべく加工を最小限にするようにしました。


ベルトサンダーでの減量加工、ハンマー鉛での増量加工を経てアクションに戻します。
同様に奇数鍵のハンマーも加工します。次のスマートチャートで赤点のように仕上げました。


ウイペンはフレンジのトルク調整とスプリング溝の木殺しを行い、ヒールクロスに0.5mm厚の布ペーパーを挟み込みます。ストライクレシオを下げる方向ですのでジャック側に入れていきます。
ウイペン装着の際にスプレッド寸法を確かめます。低音から中音にかけて特に短めだったのでレールの上に薄板を挟み込み112.5mmに合わせます。

整調では特にバックチェックの合わせが全くできていませんでした。チェックされたハンマーを押すと軽く落ちて行ってしまうし、止まる位置も低すぎ(バックチェックが高すぎ)、バックチェックスキンがゆるゆるでした。正常に働くよう処置をします。

今回、サンプルを測った段階で鍵盤レシオが0.5~0.53とかなりのばらつきがあったので、ストライクレシオもかなりばらつきがあるのを見越してFW基準の鍵盤鉛調整を行いました。(作業前のFWは下表青色の線)

まず表計算ファイルを使い平衡等式からフロントウエイト値を求めます。

FW=KR・WW+HSW・SR-BW

ウイペンウエイトと鍵盤レシオはサンプルの平均値を用い、ハンマーストライクウエイトは実際値、ストライクレシオは平均値、目標バランスウエイトは今回は38gとして計算しました。
FW測定の要領でセットした鍵盤に鉛を載せて、計算で出したFW値になるよう鉛の位置決めをします。事前に手前の鉛は一つずつ抜いておきました。
加工は通常通り行います。最終FWは、HSWの傾向線と同様の滑らかさを持って調整されました。(下表赤色の線)


FW基準の鉛調整を行った場合は次にSR微調整を行います。各鍵盤のDWとUWを測定してBWを求め、BWのばらつきを取るようにSRを調整します。今回は38gを1.5g下回るもの、つまりBW36.5g以下になってしまっている鍵盤はレシオを低くし過ぎていると考えられるので、レシオを高く調整しなおします。ヒールに差したペーパーを奥(フレンジ側)に移動することでレシオを高くできるので、ペーパーの位置を加減して調整しました。ペーパーはジャック側に入れてあるのでこれ以上レシオを下げることはできません。残念ながらバランスパンチングクロスの半カットも使えないので、一部BW40gを超える鍵盤もありましたが、レシオの高すぎるものは許容範囲内としてこれ以上は追いかけませんでした。

2017年7月23日日曜日

スタインウェイB型のタッチウエイトマネジメント

あるピアノの先生が古いカワイの代わりに中古で購入したスタインウェイのB型。それほど前ではない時期にハンマーとウイペンが交換されています。このピアノが特殊なのは、ニューヨーク製の本体にハンブルグ製のウイペンとハンマーが装着されている点です。意図的に行われたというよりは手に入りやすいものを使ったと考えられます。

昨年購入したそうですがタッチが重く弾きづらいとのことで事前チェックに伺いました。詳しく話を聞くと、全般的に重いという前提の上で、特に低音域でピアニッシモでの速いパッセージを弾く時に音が出づらく抜けてしまうことがあるとのことでした。またタッチのばらつきもあり、とても弾きづらいそうです。

アクション全景

チェックで見えてきた状況は次の通り。
1、ダンパーのかかりが5mmから10mmで早すぎで、ダンパーペダルを使わない演奏では初動で指に重さが掛かり弾きづらいと思われる。また、W型ダンパーフェルトが弦に深く食い込んでおり、弦から離れる時の抵抗が意外とピアニッシモでは引っかかるのではないか。
2、スプレッド寸法が低音111mm、高音112mmとかなり短め。ウイペンレールには何も挟まれていないので、ウイペン・ハンマー交換時にこの寸法は調整されていないようだ。この寸法が短いとウイペン入力寸法・出力寸法両方に影響があるが、入力寸法の方により大きな影響をもたらすので、ギアレシオが高くなっていると思われる。
3、シャンクフレンジとウイペンフレンジがスティック気味のため当然重く、動きづらく感じる。
4、ストライクレシオは5.6から6.2とばらつきが大きい。これはサンプル鍵での鍵盤レシオが5.0から5.3とかなりばらついていることが原因の一つで、横からキャプスタンのラインを見通すと前後に明らかにわかるばらつきがある。
5、ハンマーストライクウエイトは指標8から9で意外と重くはなく揃いも悪くは無い。
6、フロントウエイトはシーリング値辺りから+6gで、やや重すぎ傾向である。
7、鍵盤鉛は「アクセラレーテットアクション」での説明とは異なり一般的な手前に寄せた配列になっている。低音大4~5個、中音大2~4個、次高音大1~2個、とやや多めに見える。DWの数字と足された鉛の様子から、以前のハンマー交換の際に伝統的なDW基準の鉛調整が行われたことが想像される。

ウイペンとシャンクを両方ハンブルク製に交換してあるので、その部分での問題はありませんでした。キャプスタンも直立で植えられており、通常のアクションの動きをしています。


手前寄りから間隔良く入れられた鍵盤鉛:本来アクセラレーテットアクションでは慣性モーメント軽減のため鉛はバランスピン寄りに配列されると解説されている。このピアノでは工場出荷状態でこのような鉛入れをされている。

アクセラレーテットアクションのもう一つの特徴であるかまぼこ型バランスクロスブロックは健在

データを検討した結果次の作業を提案しました。
1、W型ダンパーフェルトのトリミングと掛かり調整
2、アクションの全フレンジのトルクチェックと再調整
3、アクションスプレッド寸法の基準値への調整
4、ハンマーストライクウエイト調整
5、ウイペンヒールへの薄板挿入によるストライクレシオの削減とばらつき修正
6、鍵盤手前中央付近に重心を置いた鍵盤鉛配置
7、コンサート演奏レベルでのペダル調整、整調と整音・調律

この仕事での重要なポイントは2つあり、ひとつはスプレッド寸法を適切に設定しなおすところ。ギアレシオのタッチウエイトへの影響を把握していないと見過ごしてしまうところです。
もう一つは、キャプスタンスクリューの位置のばらつきをヒールへの薄板挿入の位置調整によって相殺させるところです。これはFW基準の鍵盤鉛調整を行った上で、BWを見ながらヒールの薄板位置を調整することで可能になります。
なお、かまぼこ型バランスクロスブロックですとクロスを半カットすることによるレシオ調整は効き目がかなり少ないので、今回ここには手を付けません。

現在アクションを引き取って作業を開始しています。何か面白い発見があれば続報を投稿する予定です。


2017年6月16日金曜日

タッチウエイトマネジメント2017研修会シリーズ 終了しました

名古屋会場は今年初めての開催で2日間の日程で行われました。主催していただいた中部楽器技術専門学校の卒業生を中心にベテランから若い方まで広い年代の皆さんが集まってくれました。

1日目はタッチウエイトを極端に重くしたものと軽くしたものを試弾して経験していただきました。同じアクションでもやり方によってかなりの重さの変化を持たせることができるからです。なぜそうなるのかその原理を解説した後試弾をして感触の差を感じていただきました。初めての開催ということでもあり、専門用語については丁寧に説明しました。
午後はグループに分かれアクションモデルを使ってスタンウッド測定を体験していただきました。生徒さんの手作りとのことで、部品の位置関係などに大きな幅があり、ストライクレシオなど普通はお目にかかれない数値も算出されました。後半はアップライトピアノでのタッチウエイト調整の可能性と特徴などについて説明しました。
2日目は実機アクションにて実際の分析・調整手順をお見せしました。部品交換を伴う例については実機ではわかりやすいデータが取れなかったので金沢会場のデータを使って紹介しました。
午後は慣性モーメントについて個別部品での体験と解説、そしてギアレシオと換算慣性モーメントの説明をしました。実機アクションで要素を変えた上でバランスウエイトは同じにした何種類かの実例を準備し、その違いを体感していただきました。

ストライクレシオ計算中

ハンマーストライクウエイト測定中 




国立会場はニッピ関東支部9班の開催で今回3年目となりました。これまで継続して参加されていた方に加えて、初心者の参加もあったため若干内容を変更して行いました。

午前中は予定通り慣性モーメントについて実技を交えて解説しました。各部品ごとの慣性モーメントを実際に指で感じ、マネジメントで行う各要素の調整によってギアレシオがどのように変わるのかなど説明しました。実機ではバランスウエイトを揃えても鍵盤鉛の入り方によって重さの感覚が違うことなどを試弾して確認しました。

午後は初心者、中級そして上級と3つに分かれてそれぞれ並行して実習を行いました。
初級はスタンウッド測定とストライクレシオの計算を体験しました。ウイペンスプリング付きのアクションでしたので2つのバランスウエイトを測定してアシストスプリング力を求めたり、ストライクレシオの計算でどちらのバランスウエイトを使うかなど混乱もありましたが最後には自力で良好な数値を得ることができました。
中級はベルトサンダーを使ってのHSW調整、バランスパンチングクロスの半カット、アシストスプリングの力調整、バランスウエイト基準の鍵盤鉛測定を行い鉛位置の決定・穴あけ・鉛詰めまで実習しました。
上級は次高音のサンプル音を慣性モーメントも含めてマネジメントで行う測定と計算を完成させ調整の方向性を確認しました。

鍵盤の鉛用穴あけ(中級)

バランスクロスの半カットをするための接着剤塗布(中級)

スタンウッド測定から得た数値を用いてストライクレシオ計算中(初級)

HSW調整でのテーパー加工(中級)

午後の実習はカオス状態ではありましたが、経験者が各作業で手伝いをしてくれたので事なきを得ました。ありがとうございました。

これで今年の研修会シリーズは終了です。今回実施した各会場、そして新規会場も含め次の段階の研修会の可能性をお問い合わせ頂いています。来年・再来年に向けた研修会計画を年内には策定してご案内する予定です。この研修会の開催に興味のある個人・団体の方はyuji3804@gmail.comまでどうぞご連絡ください。

2017年6月7日水曜日

タッチウエイトマネジメント研修会シリーズ2017 中盤終了しました



金沢会場は昨年に続き2回目です。ベテランの方はもちろん、若い方にも大勢参加していただきました。

前半はタッチウエイトに関わる各要素を変化させるとどうなるのか試弾してもらい、その原理を解説しました。アクションをピアノ本体に入れての試弾でした。
後半は、実物アクション(ウイペンアシストスプリング付きで鍵盤鉛が少ない典型的なKGモデル)を、スプリングなしでどのように普通のタッチに変更できるかいくつかの道筋を提示し、実際に作業してみてその変化を比較検討していきました。追加としてスプリングを生かした形でのやり方も提案しました。


会場の様子

実機で試弾する参加者




西宮会場は今年初めての開催で2日間の日程で行われました。ベテランから若い方まで広い年代の皆さんが集まってくれました。

1日目はタッチウエイトを重くしたものと軽くしたものを試弾してもらうところから始めました。同じアクション部品を使ってもやり方によって重さの変化を持たせることができるからです。関係する各要素を変化させるとどうなるのか試弾してもらい、その原理を解説しました。初めての開催ということでもあり、専門用語については丁寧に説明しました。
午後はスタンウッド測定を体験していただき、後半はアップライトピアノでのタッチウエイト調整の可能性と特徴などについて説明しました。最後にアクションレシオとストライクレシオの違いを実例をお見せしながら解説しました。
2日目は実機アクションにて実際の分析・調整手順をお見せしました。部品交換を伴う例については実機ではわかりやすいデータが取れなかったので金沢会場のデータを使って紹介しました。
午後は慣性モーメントについて個別部品での体験と解説、そしてギアレシオと換算慣性モーメントの説明をしました。実機アクションで要素を変えた上でバランスウエイトは同じにした何種類かの実例を準備し、その違いを体感していただきました。

会場の様子

試弾している様子  Participant tries two (or three) notes between original and touch-modified one

研修用に準備した道具・部品の数々  Tools, parts and other materials for the seminar



残る後半は名古屋会場と国立会場のみです。名古屋会場は参加申し込みを締め切っています。国立会場はお問い合わせください。連絡先は当ブログの過去ログにあります。

2017年6月2日金曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2017 国立会場

国立会場のご案内

国立会場は日本ピアノ調律師協会関東支部9班主催で、一昨年・昨年に続き3度目の開催です
これまでの基礎編と中級編の知識と各人の経験を元に、今回は上級編として下記のような内容で行います。みなさまのご参加をお待ちしております。

1、BW基準とFW基準の鍵盤鉛調整
   鍵盤鉛の調整方法としてバランスウエイトとフロントウエイトを基準としたそれぞれのやり方を実習します。タッチウエイト調整の最終段階の作業工程となります。鉛の位置決め、鉛を一部抜く時の計算方法なども実習します。

2、慣性モーメント集中講座
   バランスウエイトと並びタッチウエイトの指標のひとつである慣性モーメントを掘り下げて学びます。個々の部品がどのように動くのか、それらが組み合わさった場合の影響はどうなるのか、そして各要素を変えた場合にどのように手ごたえが変わるのか、など実際に体験を通して感じ学んでいきます。


Touchweight Management (TWM) Seminar by Yuji in Kunitachi, Tokyo

One day seminar will be held in Kunitachi, Tokyo on 13 June, 2017.
Key balancing with Balance Weight method and understanding Inertial effect in piano action will be presented. Many experimental activities are proposed. No English interpretation is given. See below link for English users. 
http://yujipiano.blogspot.co.nz/2016/11/aptta.html  



日時:6月13日(火)9:30~17:00(受付は9:00より)

会場:ムサシ楽器ビオレホール 国立市東1-14-15 2階

参加費:会員無料、一般10,000円

申し込み・問い合わせは関東支部9班班長荒尾信隆さん( nobuarao@nifty.com 090-1439-4048)までどうぞ。

昼食は各自ご用意をお願いいたします。終了後、反省会を予定しております、詳細は当日ご案内します。






2017年6月1日木曜日

タッチウエイトマネジメント研修会シリーズ2017前半終了しました



今年の研修会ツアーは5月27日の渋谷会場で幕開けです。昨年の入門・基礎編に続き今年は初級・中級編を行いました。タッチウエイトマネジメントで活用する要素(個別の重さやレシオなど)を変えたサンプルを作り、どのようにタッチ感が変わるのか試弾を繰り返しながら体験していきました。タッチウエイトマネジメントの手法によってどこまでタッチウエイトが変化するのかを感じ取れたと思います。後半はタッチウエイトが重いという前提のサンプル音を作り、それをどのような手順で分析・作業していくのか紹介しました。

研修会場の様子 

グランドアクションの試弾 

アップライトにてレシオ変更の際のタッチウエイト変化を確認

仮キャプスタンを取り付けキャプスタン接点位置を移動させる
Install dummy pilots to change heel-pilot position, one at back & another at front



仙台会場は今年も2日間の連続講義でした。会場は昨年と同じく仙台ピアノ工房さん。独特の空間で集中が高まります。

コンサートピアノ2台のある空間に実習用持ち込みアクションが鎮座する

昨年の入門~初級~中級編に続き、今年は中級復習編と上級編を融合させた内容でした。特にタッチウエイトにおける慣性モーメントの影響を平衡ウエイトと対比させながら学びました。タッチウエイトが各要素ごとにどのように変化するかを確認し、その理由をそれらの特色を元に理解していただきました。

サンプル音を設定して各要素を変えながらそのタッチ感の変化を理論と結び付けて理解しました

タッチウエイトの測定中

今回は参加者の一人がハンマー交換予定のアクションをハンマー・シャンクと共に持ち込んでくれたため、より実践に即した勉強ができました。特にいくつもの可能性から一つを選択する際に考えるべき要素、たとえば求められる品質やコストを考えた上での作業時間の制約・効率などを考えながらどのように最善の作業を決めるのか、メリットとデメリットを考えながら掘り下げました。

交換予定のハンマーとシャンクを取り付けたサンプルを試弾する
Setting up with new hammers and shanks

持ち込んでいただいたアクションのスペックがストライクレシオが7+、ウイペンアシストスプリング(効きめ24g以上)付きなど、タッチウエイトを考える上では絶好(最悪?)のアクションで、みなさんと楽しむことができました。全員スマートチャートを描き、鍵盤のテンプレートを描いて数値も計算し、慣性モーメントの解析まで行いました。

参加者作成のスマートチャート(黒:オリジナル、赤:推定新HSW)

シリーズ中盤は6月1日金沢、5・6日西宮、後半は6月10・11日名古屋、13日国立です。参加に興味のある方は直接お問い合わせください。連絡先は当ブログの最近の過去ログにあります(国立会場を除く)。

2017年5月8日月曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2017シリーズもうすぐです

5月27日の渋谷会場を皮切りに3週間にわたってタッチウエイトマネジメント研修会2017シリーズを開催いたします。今年は全6会場(計9日間)の日程です。内容は初級から上級まで会場ごとに異なります。

各会場の詳細は別途アップしてありますのでそれらをご覧ください。この投稿では概略とリンクを日程順にご案内いたします。

5月27日(土) 東京・渋谷会場 初級~中級編 (日ピ関東支部研修部主催)
   http://yujipiano.blogspot.co.nz/2017/05/blog-post_6.html

5月29日(月)・30日(火) 仙台会場 中級~上級編 (阿部ピアノ工房主催)
   http://yujipiano.blogspot.co.nz/2017/03/blog-post_19.html

6月1日(木) 金沢会場 初級~中級編 (日ピ北陸支部主催)
   http://yujipiano.blogspot.co.nz/2017/05/blog-post_8.html

6月5日(月)・6日(火) 大阪・西宮会場 初級~中級編 (日ピ関西支部研修部主催)
   http://yujipiano.blogspot.co.nz/2017/05/blog-post_5.html

6月10日(土)・11日(日) 名古屋会場 初級~中級編 (中部楽器技術専門学校主催)
   http://yujipiano.blogspot.co.nz/2017/05/blog-post.html

6月13日(火) 東京・国立会場 中級~上級編 (日ピ関東支部9班主催)
   要綱はまだ発表になっておりません。発表され次第アップしますので日を改めてご確認ください。




タッチウエイトマネジメント研修会2017 金沢会場

金沢会場のご案内

金沢会場は昨年に続き2度目の開催です。日本ピアノ調律師協会北陸支部主催です。
昨年学んだ基礎部分を元に次の段階を体験していただきます。まず、復習をかねて平衡等式の各要素の役割やその効果を確認します。その過程を通じて同時にバランスウエイトと慣性モーメントの違いも体験していきます。午後はハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ方法の紹介をします。タッチウエイトの2つ指標を理解した上でどのように要素を設定していくのか、具体的に解説していきます。みなさまのご参加をお待ちしております。

Touchweight Management (TWM) Seminar by Yuji in Kanazawa

One day seminar will be held in Kanazawa, Ishikawa-Pre (Central Japan) on 1 June, 2017.
Review basic idea about TWM, setting up grand action with TWM protocol and understanding Inertial effect in piano action will be presented. Some experimental activities are proposed. No English interpretation is given. See below link for English users. 
http://yujipiano.blogspot.co.nz/2016/11/aptta.html  

実践研究編

日時:6月1日(木)9:30~17:00(受付は9:00より)

会場:石川県森林公園

参加費:会員2,000円、非会員4,000円 

申し込み・問い合わせは北陸支部勝木さん pftuner@sea.plala.or.jp までお問い合わせください。





タッチウエイトマネジメント研修会2017 名古屋会場

名古屋会場のご案内

名古屋会場は中部地区では初めての開催で、2日間の日程で行います。1日目は体験基礎編として平衡等式の理解を進めながら各要素の確認をしていきます。2日目はハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ方法の紹介とアクションの慣性モーメントの影響の基礎体験をしていただきます。みなさまのご参加をお待ちしております。


Touchweight Management (TWM) Seminar by Yuji in Nagoya

Two days seminar will be held in Nagoya, Aichi-Pre (Central Japan) on 10 & 11 June, 2017.
Review basic idea about TWM, setting up grand action with TWM protocol and understanding Inertial effect in piano action will be presented. Some experimental activities are proposed. No English interpretation is given. See below link for English users. 
http://yujipiano.blogspot.co.nz/2016/11/aptta.html  


(1日目)体験基礎編
    実機アクションを利用して各要素を変更した場合にどのような効果があるのか一つ一つ確認します。その中で各要素の解説と影響を体験し平衡等式を理解していきます。タッチウエイトの指標であるバランスウエイトと慣性モーメントの役割・違いなどについても確認します。
(2日目)ハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ
    実機アクションを利用し、実際にハンマー・ウイペン交換をする手順を追いながら解説していきます。より質の高いアクションリビルドに欠かせない知識を得ることができるでしょう。
    後半は、タッチウエイトの理解に必須な慣性モーメントの基礎を学びます。部品単体としての慣性モーメント、ギアレシオ、そして換算慣性モーメントなどを実体験を交えながら学んでいきます。タッチウエイトを明確に理解するために重要な講座です。

日時:6月10日(土)10:30~17:00(受付は10:00より)
     11日(日)9:30~16:00(受付は9:00より)

*原則2日間通しての参加となります。

会場:学校法人中部学園中部楽器技術専門学校2号館(名古屋市昭和区阿由知通3-13-6

会費:10,000(同校卒業生は特別料金が設定されています。お問い合わせください)

定員:50名先着順 定員になり次第受付を終了いたします。

申し込み受付期間:5月11日(木)~6月2日(金)申し込み方法が定められています。手続きの詳細は同研修会担当丸山さん kensyu@chubugakki.ac.jp までお問い合わせください。



2017年5月6日土曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2017 渋谷会場

渋谷会場のご案内

渋谷会場は昨年に続き2度目の開催です。日本ピアノ調律師協会関東支部研修部主催です。一般の方も参加いただけます。
昨年学んだ基礎部分を元に次の段階を体験していただきます。まず、復習をかねて平衡等式の各要素の役割やその効果を確認します。その過程を通じて同時にバランスウエイトと慣性モーメントの違いも体験していきます。午後はハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ方法の紹介をします。タッチウエイトの2つ指標を理解した上でどのように要素を設定していくのか、具体的に解説していきます。みなさまのご参加をお待ちしております。

Touchweight Management (TWM) Seminar by Yuji in Shibuya, Tokyo

One day seminar will be held in Shibuya, Tokyo on 26 May, 2017.
Review basic idea about TWM, setting up grand action with TWM protocol and understanding Inertial effect in piano action will be presented. Some experimental activities are proposed. No English interpretation is given. See below link for English users. 
http://yujipiano.blogspot.co.nz/2016/11/aptta.html  


日時:5月27日(土)10:00~17:00(受付は9:30より)

会場:島村楽器テクニカルアカデミー(旧代官山音楽院・東京都渋谷区鶯谷2-7)

参加費:会員1,000円、一般5,000円

定員:60名

申し込み・問い合わせは関東支部研修部長佐藤一夫さんnippikantou.kensyu@gmail.com までお問い合わせください。

こちらをご参照ください。
https://www.facebook.com/touchweight/photos/a.1269269213101254.1073741828.1268926969802145/1687855524575952/?type=3&notif_t=like&notif_id=1493986337543421





2017年5月5日金曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2017 西宮会場

西宮会場のご案内

大阪西宮会場は日本ピアノ調律師協会関西支部研修部の主催です。関西地区では初めての開催で、2日間の日程で行います。1日目は体験基礎編として平衡等式の理解を進めながら各要素の確認をしていきます。2日目はハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ方法の紹介とアクションの慣性モーメントの影響の基礎体験をしていただきます。みなさまのご参加をお待ちしております。


Touchweight Management (TWM) Seminar by Yuji in Osaka

Two days seminar will be held in Nishinomiya, Osaka on 5 & 6 June, 2017.
Explain basic idea about TWM, setting up grand action with TWM protocol and understanding Inertial effect in piano action will be presented. Some experimental activities are proposed. No English interpretation is given. See below link for English users. 
http://yujipiano.blogspot.co.nz/2016/11/aptta.html  


(1日目)体験基礎編
    実機アクションを利用して各要素を変更した場合にどのような効果があるのか一つ一つ確認します。その中で各要素の解説と影響を体験し平衡等式を理解していきます。タッチウエイトの指標であるバランスウエイトと慣性モーメントの役割・違いなどについても確認します。
(2日目)ハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ
    実機アクションを利用し、実際にハンマー・ウイペン交換をする手順を追いながら解説していきます。より質の高いアクションリビルドに欠かせない知識を得ることができるでしょう。
    後半は、タッチウエイトの理解に必須な慣性モーメントの基礎を学びます。部品単体としての慣性モーメント、ギアレシオ、そして換算慣性モーメントなどを実体験を交えながら学んでいきます。タッチウエイトを明確に理解するために重要な講座です。

日時:6月5日(月)・6日(火)共に9:00~17:00(受付は8:45より)
    *2日連続の講義となります。

会場:(株)川本ピアノサービス(西宮市浜2-21-1

会費:会員6,000円、非会員12,000円(昼食のお弁当とお茶は用意いたします)

定員:40名

参加申し込みには専用用紙をお使いください。お問い合わせ・申し込み書のご請求は担当の後佳孝さん jpta.kansai.kensyu2016@gmail.com までご連絡ください。




2017年5月3日水曜日

スタインウェイ・モデルAのハンマー+ウイペン交換


スタインウェイのA型のハンマー、シャンク、ウイペンの交換をしました。


過去すでにハンマーを交換されていて、しかも長い年月ろくに手入れもされていなかったためコンディションはかなり悪いものでした。
タッチウエイト系から見てみると、軽めのハンマー、ローラースプレッド寸法15.5mmのシャンク、ウイペンアシストスプリング付きウイペン、固いバランスホールやゆるいフレンジセンターとひどい整調などのため、タッチはかなりひどくバラバラでした。鍵盤も鉛調整が強引・雑な作業だったようで、割れていたりかしめが緩かったり、さんざんでした。



今回はアーベル社製のシャンク(ローラースプレッド寸法17mm)と古いスタインウェイ向け軽量ハンマー、そしてウイペンはトキワ社製のハンブルグ現行互換品(ヒール傾きあり)を使用しました。


タッチウエイト分析では、ハンマーストライクウエイトの減量(指標7目標)、ヒールへの厚紙挿入、バランスパンチングクロス半カットによってFWシーリングマイナス5g程度、BW36g、SR5.5程度を見込みました。オリジナルのSRは6.5を超えていたのでアシストスプリングなしには適当なタッチウエイトは出なかったのでしょう。タッチをきちっとさせるため、また互換品としてもスプリング付きの製品は少なくより高価になるのでスプリングなしの通常ウイペンを使用しました。

この仕事は2週間半しか実作業ができない納期設定だったので、HSW調整は±0.5gの範囲でかなりざっと揃える程度しかできませんでした。それでもしっかり整調や鉛調整もやったのでタッチ感はそれなりに良好でした。キャプスタンスクリューが斜めに植わっているタイプでしたが、直立に変更する時間的な余裕はなかったのでそのままです。そのためかウイペンヒールへの厚紙挿入の効き目はやや小さめでした。

2017年3月19日日曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2017 仙台会場

仙台会場のご案内
仙台会場は昨年に続き2日間の日程で行います。復習(1)からスタートしてハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ(2)とピアノアクションの慣性モーメントの影響集中講座(3)の2つを重点に体験していただきます。みなさまのご参加をお待ちしております。


Touchweight Management (TWM) Seminar by Yuji in Sendai

Two days seminar will be held in Sendai, Miyagi-Pre (Northern Japan) on 29 & 30 May, 2017.
Review basic idea about TWM, setting up grand action with TWM protocol and understanding Inertial effect in piano action will be presented. Some experimental activities are proposed. No English interpretation is given. See below link for English users. 
http://yujipiano.blogspot.co.nz/2016/11/aptta.html  


(1)基礎復習編
    実機アクションを利用して各要素を変更した場合にどのような効果があるのか一つ一つ確認します。その中で各要素と平衡等式、そして慣性モーメントについて再確認します。
(2)ハンマー・ウイペン交換時のアクションのセットアップ
    実機アクションを利用し、実際にハンマー・ウイペン交換をする手順を追いながら解説していきます。より質の高いアクションリビルドに欠かせない知識を得ることができます。
(3)ピアノアクションの慣性モーメントの影響集中講座
    慣性モーメントの基礎、部品単体としての慣性モーメント、ギアレシオと換算慣性モーメントを実体験を交えながら学んでいきます。タッチウエイトを明確に理解するために重要な講座です。

日時:5月29日(月)9:00~17:30(受付は8:30より)
     30日(火)9:00~16:30

*2日間の連続講義です。一日のみの受講はできません。

会場:仙台ピアノ工房 (宮城県黒川郡大和町吉岡南二丁目3-3

会費:10,00015,000(当日に承ります)

*定員は20名程度を予定しています。

<お問い合わせ、お申し込みは阿部正明 pia18h15@heronet.ne.jp までどうぞ>




2017年3月9日木曜日

ヤマハC7のハンマー交換

ヤマハC7のハンマー交換をしています。
Hammer replacement job with Touch Weight Management of Yamaha C7.

かなり新しいピアノですが豪華客船の備品で過酷な使用のため弦跡がひどく音質も痩せていました。そのため昨年船上でファイリングと整音をしましたが音のやせは変わりなく、今回はピアノを船から下して工房に持ち込んでのハンマー交換修理です。2か月後にオークランド最終寄港の際に載せて行くことになっています。

オリジナルの状態。HSW(ハンマーストライクウエイト:下図)は平均で指標11といったところでしょうか。サンプル鍵盤での測定ではBW(バランスウエイト)は35~43gとかなりばらつきがあり、FWはシーリング値よりも3~8g重い感じでした(下の下の表)。SR(ストライクレシオ)は5.9~6.1でした。
Purple dots on below smart chart is the SW of original hammers. It seems average 1/2 High, a bit heavier set even it was reshaped aggressively. Basic parameters were measured at sample notes, 35 grams to 43 grams of BW, 3 grams to 8 grams heavier FW and 5.9 to 6.1 of SR (or R).
オリジナルハンマー(かなり削り込んだ状態)のスマートチャート
Smart chart of original hammers


オリジナルの状態でのFW。C7の場合、測定によらない型板による鉛入れですが、こうしてみると意外にスムーズに推移しています。
FW at original condition. Key leading was done by template instead of actual DW/UW measurement, it seems quite smooth. However majority of them are heavier than FW ceiling.

3要素関連表でHSW#11、SR5.9でチェックするとBWは50gになりますが現状では35~43gとある程度普通の範囲に入っています。もちろんこの差はFWに行っているわけで、上図で現状FWをシーリング値と比較してみると、ほとんどの鍵盤でシーリング値を超えています。
On the parameter table, combination of #11 of SW and 5.9 of SR shows 50 grams of BW. Actual BW was much less than it. This gap went to heavier FW in this case (see FW graph above).

新しく付けるハンマーはアーベル社製のC7仕様のもの。チャート内で紫色のオリジナルに比べて、緑色で記した新ハンマーはかなり軽いようです(ハンマーウエイト:HW+シャンクストライクウエイト:SSWで推算)。低音と最高音はオリジナルと同様な指標10~11ですが、中音・次高音は指標8~9.5程度です。3要素関連表と平衡等式の試算から、HSWは指標9、BWを40gにするとFWがシーリング値マイナス3g程度が達成できるのがわかります。SRを一段下げるためにウイペンヒールへの厚紙挿入を行う予定です。
Proposed SW which is calculated by HW plus SSW (Shank Strike Weight) of new hammers is shown below smart chart at green dots compared with original SW (purple dots). We can look at Top Mid of SW from this new set of hammers. Then we will be achieving 40 grams of BW with 5.5 of SR and ceiling minus 3 grams of FW by spread sheet trial and the parameter table. I will reduce about 0.4 of SR by shimming wippen heel this time.


新ハンマーで指標9は低音を除いては問題なく達成できそうです。指標9の数値と比較しながら各ハンマーの事前テーパー削り量を設定し加工します。中音下は削らなくとも良い数値ですが、角度が付いているためシャンク部分から下は少し削って(0.1g程度分)完成時に両脇のハンマーと接触しないようにしました。次高音部は全く削らないハンマーもかなりありました。
Pre-taper hammers. Separate into 5 different categories, no taper (0 gram), very little (0.1 grams), little (0.2 grams), moderate (0.4 grams) and aggressive (0.6 grams) decided by each gap between proposed SW and Top Mid line.


接着後・シャンク端切断後HSW。スマートチャート指標1下の印は事前テーパー量、点は0.1g、小丸は0.2g、中丸が0.4g、楕円大丸が0.6gを目安としたテーパー量です。SW at after cutting excess shank in green dots. 

仕上がりの数値を意識しながらテールを削り、0.2g以上軽いものはハンマー鉛を入れて調整しました。低音部は元のハンマーが重くきれいには揃いませんでしたが、これでも十二分でしょう。中音から上は多くのハンマーに鉛を入れて調整したので、0.1g単位で調整することができました。
Majority of tenor and treble hammers were adjusted by hammer leads. Bass seems a bit uneven due to too heavy original HW.

最終仕上がりのHSW 
Final SW

組み込み・整調・整音後、最終整音前にBW基準の鍵盤鉛調整をしました。