2016年7月15日金曜日

シンメルグランドのシンプルウエイト調整

日本での研修会ツアーから帰ってきて平常通りの仕事に戻りました。予定表を見たらしばらくタッチウエイトがらみの仕事はなかったのですが、急にこの仕事が回ってきました。

個人所有のシンメルのセミ・コンサートグランド、大ボスによるとタッチが重いのがフレンジセンターと鍵盤ブッシングクロスの固すぎだと考えていたのが、それらを直しても今一つ軽くならないとのこと。ちょっと見てくれ、というので計測しました。試弾してみると確かに動きが重く、特に低音に行くにしたがって重くなる印象がありました。鍵盤鉛は低音が手前に1~2個、中音中ほどから手前に2個、次高音中ほどから手前に1個と、低音の鉛量が少ないようです。ハンマーは普通で、削りしろはある印象でした。
仕事の内容としてはできるだけ簡単に短時間でできて効果があること、個別のばらつきは気にしなくても良い、というオーダーです。

サンプル音での測定結果は次の通り
2gおもりによるSRは5.5から6.0
BWは低音45g、中高音37~40g
FW:シーリング値よりも低音は7~8g軽く、中・高音はほぼシーリング値近辺
HSW:全体に#8から#9
平衡等式で求められたSRは5.7前後

バランスレールはピンを中心に半円形に盛り上がった形状で、バランスクロスの半カットは効果がなさそう、という印象を持ちました(後で実際にやってみたら効果が出ました)。


3要素関連表によるとSR5.8でHSW#8ならばBWは40g。SRは悪くないので、HSWを低めに均してBW基準の鍵盤鉛調整をすれば十分良くなるところです。しかし時間を掛けたくないということで、SRを一段下げた上で特にBWが重い低音だけ鉛調整をすれば良いと判断しました。

実際にサンプルでSR下げの実験をしたところ、ヒールへの厚紙挿入で4~5gBWが軽くなり、パンチングの半カットでも同様に4g程度軽くなりました。鍵盤筬の形状が気になったので、今回はヒールへの厚紙挿入をすることにしました。高音部は十分軽いのでこの作業は行わず、低音から次高音までやることとしました。

実際に作業をした後ざっと弾いたらなかなかの効果が出ていてこれなら問題ない、という程度になりました。次高音と高音のつながりも全く違和感を感じません。

週明けに整調を行った後、BW基準の鍵盤鉛調整を低音から中音下にかけて行い仕上げる予定です。かかった時間は測定・分析1.5時間、ヒール1.5時間。来週行う鉛調整は2時間程度を見込んでいます。