2016年6月20日月曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2016終了しました

タッチウエイトマネジメント研修会シリーズのご報告

大月会場 6月18日(清水ピアノ調律事務所工房にて)

今年の研修会の最後は拙著「タッチウエイトマネジメントの方法」の発行元である山梨県の清水ピアノ調律事務所工房にさんにて開催しました。特に慣性モーメントの計算と表計算ファイルの使い方に焦点を当てて、実際にどのようなステップで改造内容を決定し、どのように出てきた数値を判断するかを学びました。

 鍵盤の慣性モーメントを求めるためのテンプレート作成中

表計算ファイルを利用した分析の仕方を実習中

バランスウエイト基準での鍵盤鉛調整のやり方を説明中

今回は上級編という位置づけでした。しかし、このレベルまででこの技術のすべてを紹介できたわけではありません。ここまで理解した上で今度はアップライトアクションへの適切な応用、計算式や理屈の部分の適切な理解、一台をまとめていくために必要な視点と知識、部品交換をする場合のアクション全体のセッティング方法などのいわば超上級編である「専門家編」も考えられます。

さらに、私が現在研究中の分野、たとえばアクション3部品の適切な慣性モーメントの割合の標準化であるとか、アクションの種類や弾き手のタッチ力と慣性モーメントの相関性・標準化などを行う「研究編」も将来的に発展していくでしょう。

今回の研修会に参加された方々がますます理解を深め、来年また会えることを大変楽しみに思っています。最後になりますが、今回の研修会シリーズを主催していただいた方々、そして参加していただいた方々、また拙著をご購入いただいた方々に心より感謝申し上げます。

なお来年の研修会シリーズは、今回実施した会場と新規のお申込みなどですでに開催可能な件数が埋まりつつあります。研修会の開催に興味をお持ちの個人や団体のみなさんは早めにお問い合わせをしていただけると助かります。

2016年6月18日土曜日

タッチウエイトマネジメント研修会2016、広島会場と鳥栖会場のご報告

私の今年の研修会シリーズも大月会場を残すのみとなりました。後半に行った広島会場と鳥栖会場の様子をレポートいたします。



広島会場 6月13日

他支部からの参加者も含めて34名のみなさんと研修会を行いました。今回は5グループに分かれての実習です。実際のアクションを2台、アクションモデルを1台用意していただきました。内容は金沢会場や高松会場と同様で、基礎的な内容を実習を取り交ぜて体験するスタイルです。タッチウエイトのグラム量の変化もそうですが、実際のタッチ感・整調への影響も含めて体験していただきました。会の最後には会場のスタインウェイを使ってクリップをつける前とつけた後でのタッチ感と音色の違いを感じる試弾会も開催しました。ハンマーストライクウエイトによる違いの大きさを感じていただいたことと思います。

タッチウエイトの説明をする筆者

会場全景

アクションにて作業中

九州鳥栖会場 6月15・16日

九州支部主催の今回の研修会は2日間の日程です。台湾から2名と韓国から7名も参加をいただき総勢43名でした。
1日目は基礎の説明と実習です。7グループに分かれてアクションモデルを使います。平衡等式の測定や要素を変化させたときのタッチの変化などを体験いただきました。

会場全景

参加者みんなが手を出して、、、

おもりを載せる位置も正確さを期しています。

2日目はハンマーを交換したという設定での実習です。検体アクションのオリジナルの状態を測定・記録した後、1オクターブ下の重いハンマーに交換し重くなってしまったタッチをどのように解決していけるのか実習しました。まず表計算ファイルで実測のデータからどの作業が必要かを想定します。そしてその作業を順々に行いながらタッチウエイトの変化を確認していきました。ハンマーストライクウエイトの調整は、まず練習用に用意したハンマーを利用してテーパ削りと鉛入れを実習し、次に検体アクションで適宜加工しました。

ハンマー鉛をかしめる実習

ボール盤によるハンマー鉛用の穴あけとサンダーによるテーパー加工

検体アクションで実習中

多くの参加者が拙著「タッチウエイトマネジメントの方法」を傍らに作業していました。ありがとうございます。

今回は機械類も持ち込み実習をたっぷり行ったので、タッチウエイトマネジメントの実際を体感できたことと思います。今後現場で少しずつ実践し、ものにしていってもらいたいと願っています。




2016年6月10日金曜日

タッチウエイトマネジメント研修会どんどん進んでいます

先週末から昨日まで4会場で研修会を行いました。

八王子会場(6月4日)ユーロピアノさん工房にて

昨年に続いて2回目になりました。スタンウッドの計測キットをお持ちの方が増えて、5グループ全部がそれを使用するという快挙!昨年の続きからのプログラムを予定していましたが、数人初めての方がいるのと、昨年の参加者からも復習からやって欲しいとの要望もあったということで、予定を少し変更して行いました。
基礎的な原理や測定方法の復習からスタートして、各種のタッチ変更手法を実習し、ハンマー交換を想定した分析を行いました。新旧ハンマーのストライクウエイトを測定してスマートチャートに記入したり、慣性モーメントの影響を考えました。最後はクリップをシャンクにはめてハンマーストライクウエイトの違いによる音色とタッチの違いを体験して研修会を終わりました。


アクションレシオ測定中

渋谷会場(6月5日)代官山音楽院ホールにて

関東支部研修部の主催で行いました。50名近くの参加者を得て入門から基礎編の研修会です。タッチウエイトの歴史を紹介した後、実習を交えて伝統的な手法と平行等式の測定方法を体験していただきました。簡単にできる方法でタッチウエイトが変わったりアフタータッチが変わったり、実際に現場でも試してみようと思える自信がついたのではないでしょうか。参加人数も多く、9つのグループに分かれて実習しました。スタンウッドの測定器具が5セット、そして私の自作の器具が4セットあり、全員同時に平衡等式の計測ができたのは前日に続く快挙でした。

講義中の筆者

熱気にあふれる研修会場

鍵盤の支点移動を行ってウエイト測定してみる

金沢会場(6月7日)

森の中の素晴らしい環境の中での研修会でした。会場になったホールも広く快適です。渋谷会場と同様のプログラムで進行しました。支部外や非会員も含めて34名の参加で、いつもの研修会よりかなり多い参加者とのことでした。アクションモデルを10台用意していただいたので、1グループ3~4人でウエイトの変化をチェックできました。スタンウッド測定ジグは私の4セットだけだったので昼食時間も使って実習しました。

講師回りのセッティング

放射状にグループを配置し講義と実習を効率良く行いました

高松会場(6月9日)

郊外のきれいなホールでの研修会でした。舞台が上下できたので、客席と舞台を同じ高さにして6グループに分かれて実習しました。当初ハンマー交換時のやり方に焦点を当てて、という予定だったのですが、アクションモデルが6個集まったのと、初めて参加する会員も多いということで、基本プログラムを軸に進行しました。支部外や非会員も含めて31名の参加で、いつもと違う顔ぶれだったようです。北海道からわざわざ参加してくれた人もいました。1グループ5~6人でウエイトの変化をチェックしました。時間の関係でスタンウッド測定は昼食時間を利用して希望者のみとしました。

持ち寄ったアクションモデルにて測定中

ウエイトの変化とアクションの動きを検討中

会場の様子、6グループに分かれて実習です

中盤4会場が終わったので、今日から週末は休養ということで前から回りたかった四国を鉄旅です。天気も良く山並みがきれいでした。

徳島線よしの川ブルーライン乗車中

穴吹駅からの風景

各会場の主催者の皆さま、そして参加者の皆さま大変お世話になりました。また、たくさんの方に拙著をご購入いただきました。ありがとうございました。

来週は広島会場、鳥栖会場そして締めは山梨会場です。今回の研修会ツアーもいよいよ終盤になります。各会場の参加予定者のみなさん、いましばらくお待ちください!

2016年6月1日水曜日

いよいよ2016年のタッチウエイトマネジメント研修会シリーズが始まりました!

いよいよ2016年のタッチウエイトマネジメント研修会の始まりです。今回の一番手は仙台会場です。会場は仙台ピアノ工房さんのホールで、この素晴らしい環境に遠くは関東・中部地方から参加の方も含めて15名が集まりました。
http://www.sendai-piano.com/

みなさんピアノ技術者として高いレベルでご活躍の方ばかりですが、この新しい技術を学ぼうと会場は熱気にあふれていました。
一日目の講義の様子

1日目はまず、導入として基礎講座から始め、伝統的なタッチウエイトから最先端の技術までを紹介しました。
次にバランスウエイトなどの意味を整理してからスタンウッドによる平衡等式を紹介しました。実物のアクションを持ち込み、測定の仕方を実習しその意味を考えていただきました。午後はタッチウエイトを変えるための要素を紹介し、実際にその作業を行った場合にどのくらい重さが変化するか体験しました。3時の休憩後には慣性モーメントの意味を説明した後、弾き手とアクションの持つ慣性モーメントがどのような関係があるのかを説明しました。
最後に会場の備品であるベーゼンドルファのインペリアルのハンマーシャンクにクリップを取り付け、ハンマーストライクウエイトがタッチと共に音色にどのような影響を与えるか、弾いて聞いて確認しました。
6mmジグと押さえジグを利用したアクションレシオの計測

2日目はチェックリストを利用してタッチウエイトマネジメントで必要なデータを各自一鍵分採集し、やり方を一つ一つ確認していきました。そしてタッチウエイト分析計算表を使い、どのような手順で事前分析をするのか、この重くて仕方がないアクションでもやり方によっては使えるものになるのか、順を追ってその解決法の一案を解説しました。
午後は実際にハンマーの軽量化をサンダーで行い、ウイペンヒールへの加工、バランスクロスの加工などを体験しました。また経験としてハンマー鉛を使った増量加工も実習しました。これらをアクションに組み込んだ後バランスウエイト基準の鉛調整を行い、研修会を終わりました。

バランスウエイト基準の鍵盤鉛調整の体験実習

来年の研修会では続編として中・上級編をやりましょう、とのお誘いをいただきました。是非実現したいと思います。主催していただいた阿部さん、参加者のみなさん、どうもありがとうございました。

分担して測定した検体アクションのHSW値をスマートチャートに記入している様子です